


















この住宅は、広島県福山市の小さな漁港に面している。
この敷地は、100年以上にわたりクライアント家族が住み続けてきた土地である。近年、隣接する道路の整備によって敷地の形状は大きく変化し、細長い土地だけが残された。しかし、クライアントはこのような敷地条件になっても、先祖代々受け継いできたこの場所に住み続けることを望んだ。
私が意図したのは、港の港湾施設の一部あるいは土木構造物を思わせる建築をつくることであった。それによって、この住宅があたかも古くからこの場所に存在していたかのような印象を与えたいと考えた。
敷地の形状から、平面計画は必然的に線状の構成となった。しかし、内部と外部にまたがるように配置した8つの階段によって、家族は日常生活の中で多様な動線を選択することができる。単調になりがちな細長い空間に、変化に富んだ生活の可能性を与えている。
以前、家族は平屋の住宅に暮らしていた。その住宅は広い中庭と漁港に直接開かれており、港には自家用の小さな船を係留していた。部屋から直接中庭や港へ出ることは、家族の暮らしに深く根付いた日常の一部となっていた。
新しい住宅においても、こうした生活のあり方を継承している。どの階のどの部屋からも、玄関を通ることなく中庭を経由して港へ出て、船に乗ることができる構成としている。