「横尾の家」
敷地は交通量の多い幹線道路に面しているが、昔ながらの集落の形態が残る地方都市郊外ののどかな環境にあり、敷地を越えた視線の先には周囲の緑豊かな山並みを望むことができる。
道路からの騒音や視線から守りつつも、周囲の自然や地域特有の大らかな空間性を,ふんだんに居住空間に取り込むことを計画の主眼に置いた。
敷地周囲を塀で取り囲むことを避け、建築自体を敷地一杯に配置し、その外周部をガラスで包んだ。このガラスの内部は外気である。空気のボリュームを縁側のように巡らせることで、外部に対し透過度の高い境界域を形成している。また外周部に設けた引戸の開閉によって通風が確保され、内側に配された居住スペースは守られながらも外気に対し十分に開かれた空間として成立している。引戸の内部には横格子とプリーツ網戸を仕組ませてあり、就寝中でも安心して戸を開放できるように配慮した。
雨の降り込む中庭と、それに続く屋根のかかった外気のテラス。ここを中心に配された居間・和室は、引戸を開けることによってこの外気に満たされた半屋外空間と一体となる。この外部空間は、各部屋を結ぶ動線でもあり、拡張されたリビングでもあり、子供達が遊ぶ庭でもある。外周の緩衝帯とともに、道路側に並列した納戸・犬小屋といったサブスペースのボリュームにより外部の喧噪や騒音から守られた、安心感の得られる居住空間となっている。
窓を開け放ち、四季の変化や自然の息づかいに呼応した、地方都市ならではの豊かな生活が、この国道沿いの敷地で実現されている。
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