宮の町の家
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

「宮の町の家」

敷地は工事車両も充分に入れない、細い道が張り巡らされた昔からの住宅密集地にある。周囲には比較的小さい家が立ち込み、家同士の距離も近く庭も充分に機能する広がりを保てないでいる。

計画にあたっては、外観のスケールを周囲から突出しないように控えめなボリュームとし、大きな外部空間を内包する家とした。近隣からのプライバシーを確保しつつも、四季の移ろいやおおらかな地域性をふんだんに居住空間に取り込むことを計画の主眼に置いた。

「横尾の家」でその効果を充分実感できた外部空間を建物内に内包するつくり方をこの住宅でも採用した。建築の周囲を外気の廊下で包み込み、中心に雨の振り込む中庭を配置している。雨の降り込む中庭と、それに続く屋根のかかった外気の居間。ここを中心に配されたLDK・和室・茶の間は、引戸を開けることによってこの外気に満たされた半屋外空間と一体となる。
周囲を囲まれた敷地でありながらプライバシーを気にせず各室ともに窓を開け放つ事を可能とする住空間とした。

外気の居間は、各部屋を結ぶ動線でもあり、拡張されたリビングでもあり、主人が趣味を楽しむ庭でもある。外周部に設けた引戸の開閉によって外気への開放度は調整可能であり、中間季や夏季では風を取り入れ快適に過ごす事が可能な木陰の様に、また冬期には開口を閉ざす事で上着を一枚着込むような働きをする。

(藤本寿徳)

photo by Kazunori Fujimoto

 


 

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