阿品の家

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
   
 
 
 
 
photo by Kazunori Fujimoto

「阿品の家」

正面に宮島・厳島神社を望む敷地である。
瀬戸内海の水平方向への広がり方を考えながら、傾斜地の特性を活かした断面方向の広がりをミックスしてできる水平垂直2方向に伸びやかな住まいを目指した。
1階を子供部屋、2階接道レベルを居間、3階を主寝室として使うことを想定した3階建である。土の掘削量が少なくて済むように玄関ボリュームの荷重を土に預けず、1階と踊り場階が傾斜に沿って土と接している。
1階へは玄関から1.5階分下がることになり、壁に挟まれた長く暗い階段を降りて辿り着く先に天井の高い部屋が現れる。地下に降りて行くようなシークエンスとなり、上階とは性格の異なる落ち着きを感じる部屋となった、複数の空間性を孕む奥行きの深い家を目指した。
2階と3階は吹抜けを介して繋がっている。吹抜に設けたスリット窓が取り付く壁は建物幅を超えて張り出す。眺望が建物幅で限定されるのではなく、さらに水平方向へと拡張する効果を期待した。浴室は道路側に配置したが、スリット窓を通して宮島を望むことができる。2階と3階では吹き抜けの縦方向、張り出した壁の水平垂直方向、宮島に向かって突き出したバルコニーによる正面方向の3軸へと意識が伸びることを意図した。
宮島側のファサードはこの室内の3つの方向性がそのまま形に現れている。この張り出した壁と突き出したバルコニーによるデ・スティル的形態操作で箱が解体され、動きが感じられる立面としている。厳島神社に対して控えめで凛とした立ち姿で正対させたいという思いがあった。
3方向に加え道路側に設けた開口によって、2階と3階では海から道路へと部屋を横断する抜けを確保した。プライバシーは階段中壁で守られている。
恵まれた場所性に応えるシンプルな空間構成のみで、瀬戸内のゆったりとした雰囲気が室内に充満する住まいを考えた。

 
 
flickr(House in Ajina)

 

 

 

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