2019年 9月17日
今まで海が見える家を7軒設計させていただいてきましたが、
それぞれの家で、同じ海でも周囲の深夜の雰囲気は違ってきます。
季節のいい時は窓を開け放して就寝することも多いと思いますが、
そのような時、室内といえども空気的には外と一体となり、
どこから室内でどこから室外なのか、その境目は溶けてなくなっていくように思われます。
室内にいても外にいるようで、それでいてちゃんと守られている安心感を感じることができる。
設計用語では「開きつつ閉じる」という言葉を使うのですが、
そういう家の価値を大事に考えています。
全てのプロジェクトの設計の中心テーマです。
敷地周囲にある豊かさを味方につけ、その特徴を活かしきること、
自身の経験的には、どこか子供の頃の懐かしさや安心感を思い出させてくれるような
そういう時間と感覚が一瞬でも家の室内空間にも漂うことを理想としています。
写真と動画は大潮の満潮時の深夜の静けさです。
「因島の家」の前の漁港では
船底掃除のために漁船がドックに揚げられています。
どの家の明かりも落ちている中、波に揺られる船が軋む音とともに
深夜に漁をする一隻の漁船の静かなモーター音が聞こえてきました。
竣工して14年経ちましたが、お施主さんは今でもテラスに出て飲んでるそうです。
実際気持ちいいんだと思います。
目の前から花火も上がるし恵まれた場所です。
港が整備される前のこの場所の大昔の写真を見たことがあります。昔は砂浜が続いていました。
道や港の姿が変わっていっても変わらないものもあるのです。
地方の豊かさといいますが、こういう場所に漂う雰囲気が
豊かさの具体的な一つの現れではないでしょうか。 |
11:17, Tuesday, Sep 17, 2019 ¦ 固定リンク
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