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藤本寿徳

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人為的な地下空間に惹かれる
音楽や絵画、彫刻、写真など、その世界で評価されている物を鑑賞してもピンと来ないことが殆どである。
自分の場合これらは分野外なので、その専門分野の人達に比べると感性が鈍いのだと思う。

人は感性の方向性が違うものだと自分自身の事を考えるとそう思うことがある。
自分は建築家なのだから、建築的なものへの感受性が高いであろうと思いたいが、どこまでが建築的なものの範囲に含まれるのか、またそれは建築関係者であっても人それぞれだと他の人を見てそう思う。

自分の場合、近所でも何種類かの場所や空間体験があって、
外国人スタッフが入所した時は、僕から建築を学びたいんのだろうけど、僕のクリエーションのバックボーンを教えようと言って、まず最初に県北の林道のドライブに連れて行き、滝を見て山の中を歩く。この時の光、音、土や木の感触、湿気や空気の体験が自分のクリエーションのバックボーンになっているんだよと説明していた。

彼らは最初、何を言っているのか全くわからないという。
しかし彼らが2年間事務所に勤めている間に、それもだんだん分かってくるようで、決定的なのは出雲の山中に連れて行く時である。彼らは二人とも母国で「もののけ姫」を見てジブリアニメのファンであり、ここがもののけ姫の舞台なんだよと説明すると、映画の世界観と現実をリンク付けて、自分の幼少期のアニメの中で見たジブリの森のイメージを思い出すようにアンテナを設定したのだと思う。アニメと言ってもヨーロッパの森と違う出雲の森の雰囲気から何かを感じる以上子供にとっては強烈な空間体験の一つだ。

山の中を彷徨うことが設計にどう関係しているのかを説明するのは難しい、その時間にどのように感じているかを言葉にするのが難しく、設計に直接形となって現れることもないから伝えること自体が無理なのだけど、確実にそれらが設計の中に生きているとは実感している。子供の時に遊んだ千葉の山と中国地方の山から感じることは全く違うものである。

話を変えてわかりやすいことに限って言えば、建築に携わっているから、建築的なものには反応する度合いが大きいのですということは理解されやすい。
農村や農家、近代遺産や産業が作った景観、ダム、水力発電所、鉄道、橋梁などは形があるから簡単である。


建築は周囲の環境、建築の形や質感、そして空間が合わさった体験である。
ここで人一倍空間が好きです、空間が趣味です。と言っても何を言っているのか伝わらない。
そもそも建築家の間では、「空間」と口にした途端、空間の定義って何?と問い詰められ話が進まないこともあるぐらい。

ただ地下空間は、単純に空間と石や空気の質感からのみなる外界から閉ざされ完結された世界なのでピュアである。自然の鍾乳洞もいいが人為的に作られた地下空間は建築そのものである。
フランスの鉱山、採石場といった地下空間ばかりを撮るFlallier氏の写真は、
自分のクリエーションの源の一つになっています。

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Double niveau

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12:29, Thursday, Feb 20, 2020 ¦ 固定リンク

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