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藤本寿徳

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審査評
house in sunami

先日、「須波の家」が選ばれたひろしま建築文化賞での審査評がHPに掲載されています。

http://www.h-aaa.jp/prize/prize7/prize_suwa.html

広島県立美術館学芸企画監の松田さんが書いてくださいました。

批評していただけるのは大変ありがたく、 以下にHPから転載させていただきました。

[ 推薦概要 ]

個人として、あるいは家族として家に求めるものはなんだろう。家がハウスとして物理的に堅牢で安全であること、ランニングコストが合理的であること、機能性を持ち暮らしやすいこと、住む人の社会的ステータスやエコロジーへの視点を示していること、などなどだろう。これらの基準や条件は全てそこに住む人の価値観や趣味に属するものといってよい。私はそれだけではなく、その家自体が周りの自然風土や景観と調和していることもその家がよい家かどうかを判断する重要な要素の一つでもあると思う。

この「須波の家」は瀬戸内海を見下ろす角地に建ち、その家の奥側と向かって左側は隣接する家がない。すぐに瀬戸内海の自然と景観と接続している。外観はその自然に対して無理なく調和している。それは、この家がコンクリートとガラスを使用し、特定の地域の建築様式や時代的特性を持たないことが原因の一つとなっていると思う。コンクリートの色と質感がニュートラルなものであり、余計な主張を自然と風土に対して行っていないのである。

また、波型の屋根の形が無意識のうちに瀬戸内海の海の波や自然を連想させ、この家がこのロケーションにあることの必然性を感じさせてくれる。

室内には壁はほとんどなく大変開放的で、キッチン回りなども収納を含め機能的である。だが、この家の最大の個性は、連続する横長の大きな窓から見ることができる瀬戸内の景観である。室内に居ながらにして外の瀬戸内海の景観と繋がっていることを実感できること、それが毎日の暮らしの一部として住む人の感覚に馴染んでいること、このことこそこの「須波の家」の最大の収穫ではないかと思う。

この家は単に家の中に住むことだけを目的にしていない。自然や風土と一体となって暮らすことまでその射程にいれており、それは十分に実現できている。
(松田 弘)


08:56, Friday, Aug 31, 2012 ¦ 固定リンク

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