← |
2024年12月 |
→ |
S |
M |
T |
W |
T |
F |
S |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
|
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
|
|
|
|
|
福山駅前水辺公園プロジェクト(デザインのきっかけ) |
福山駅前水辺公園プロジェクト
「デザインのきっかけ」
*「デザインは難しい。だから<デザインのきっかけ>は大事に使った方がいい。」というのが僕の考えである。デザインの「きっかけ」は今回の場合「歴史=福山城の遺構」にあたる。
*駅前を設計する際、当然のことながら「交通処理」という極めて機能的な計画が求められる。 一方で市民が誇れる街の玄関口として、福山ならではの「オリジナリティ」や「親しみのもてる公共空間」といった性質もそこに求められて然るべきだろう。
*しかし現代において、この「機能性・経済効果」と「オリジナリティ・親しみやすさ」の二者が共存することが困難であることは、日本各地どこでも同じような駅前風景を見れば判るだろう。
後者を成立させるには、その地域に独自な事情やモノにも視点を当てるといいのだけれど、大体の場合「機能性・経済効果」を強調するほど案に説得力が帯びて、計画は次々と建設されていく。 この単純な構図を覆すには、機能・経済性以外の豊かさを盛り込む「理由、説得力」が必要となる。その場所に元からあったものを有効再生して豊かさを引き出すことも、その一つである。
今回の福山城遺構の出土はまさしくいい機会ではないだろうか。「オリジナリティ・親しみやすさ」のよりどころとなり、「最低限必要とされる利便性」とのバランスをはかる際の判断基準になると思う。 機能や効率、コストといった判りやすい判断基準以外に、皆が共有できる価値基準を設計に盛り込めること自体が難しい世の中で、駅前計画に機能、効率だけでない豊かさを盛り込むことができるいい機会だと思う。
*駅前ロータリーをイメージして、駅前ロータリーを設計すれば、駅前ロータリーしかできない。
→しかし、元々あったお堀を公園として利用し駅前を設計すれば、福山でしかできない駅前が生まれる。駅を降りたらすぐその場所がロータリーでないといけない絶対的な理由はなく、「お城(公園)の中にある駅」という、場所性を活かした他所にはない魅力的な駅が生まれる。
送迎やバスの乗車には多少不便でも、樹々が生い茂り、人が集まりくつろぐ公園内に駅があることは、通過点だけでなく結束点としての駅そのものの機能を充実させるだろう。
*その他にも例えば材料の話。
日本の大多数の駅前風景はアスファルト、コンクリートで覆われている。経済性、施工性、維持管理…多面でのメリットを持つ現代都市には欠くことの出来ない建設材料だが、前述したように「オリジナリティ・親しみ」といった要素はその材質感には期待できない。 現代都市を建設する際に、木・石・土・草・水といった田舎に残る親しみ深かった材料は採用されてこなかった。
観光地でさえ、中途半端にあがいた結果「木のように、土のように見える」コンクリートや樹脂製の街路灯や塀やガードレールや自動販売機など、フェイクな景観を生んでいる。
今回発見されたお堀は当然のことながらコンクリート製でもなければプラスチック製でもない。本物の美しい石組みだ。 耐久性やコスト先行で考える今日では選びにくい材料が既にそこにあることで、新しく使う材料もそれを継承し、石以外の材料でも現代都市が使ってこなかった本物の材料を使う事ができる。使用する材料選定を見直す「きっかけ」にもなる。
*遺構の保存そのものだけが目的なのではない。材料ひとつ、形状ひとつ、デザインの決定理由それぞれを決める時に、遺構を一つのきっかけとして、環境と地方の時代に適した潤いのある公共空間となればいいと思っている。過去を引き継ぎ、未来に継続発展させていかなければならない。
「継続の手法、感性」が我々に問われている。
*1891年(明治24)お堀を埋め立て福山駅が開業した時に、駅の北側は文化ゾーンとして城を残し、南側は中心市街地として城を残さないという方向で議員さんたちが取り決めた経緯があって、明治時代から決まっていたのだからしょうがないよという二人の市職員の意見を聞いた。
その時々の決定は時代性を反映するだろう。封建社会から近代社会への転換期、古い体制の遺物である城は乗り越える対象物として、今とは意味が違っていたであろう。環境と地方の時代といわれる今、城はひとつのきっかけをつくってくれる。1622年完成の福山城は、386年前の過去に生きた人々からの、1891年完成の福山駅は117年前生きた人々からの贈り物のように思える。
*なんといっても、新幹線駅が城の中にあるのは、日本の中でも珍しいのだから、この特殊性に目をつけないのはもったいないと思うのだがどうだろうか。
(福山駅に関連する以前の投稿)
福山駅前水辺公園プロジェクト http://www.jutok.jp/cgi/blog/blog.cgi/permalink/20080108123814
建築文化 http://www.jutok.jp/cgi/blog/blog.cgi/permalink/20080109191940
福山駅前水辺公園プロジェクト(福山城再生計画) http://www.jutok.jp/cgi/blog/blog.cgi/permalink/20080716112249
|
16:36, Monday, Aug 11, 2008 ¦ 固定リンク
|